「子供の歯並びが悪い場合、歯ブラシが歯茎の境目までしっかり届かず、知らない間に歯肉炎になってしまうケースがあるのです。子供が歯肉炎になる原因、歯肉炎の種類、歯肉炎と歯並びの関係について小児歯科医が解説!」
みなさん、こんにちは!
東京都大田区田園調布にある小児歯科・矯正歯科専門の歯科医院「ABC Dental」の院長です。
近年、歯科医院で子供の歯のクリーニング中に出血するケースが多くなっています。
子供が硬いものを食べたときに出血したり、歯磨きをしたときに歯茎から出血した場合は歯肉炎になっている可能性があります。
子供も歯肉炎になるの?と驚かれるかもしれませんが、実は歯並びが悪い場合、歯ブラシが歯茎の境目までしっかり届かず、知らない間に歯肉炎になってしまうケースがあるのです。
そこで今回は、子供が歯肉炎になる原因、歯肉炎の種類、そして歯肉炎と歯並びの関係について小児歯科医が分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
▽先読み!この記事で分かること
- 歯茎から出血したら歯肉炎のサイン
- 歯磨きが不十分、磨き残しが原因
- 歯の生え変わり時期は歯肉炎になりやすい
- 歯並びが悪いと歯肉炎リスクが高まる
Table of Contents
ご質問:歯医者で歯のクリーニング中に出血したのはなぜ?
ご質問をいただきました。
ご質問者様:6歳の娘さんのお母様
子供が歯医者で歯のクリーニングをした時に、出血がひどく、口の中が血だらけになって、娘が嫌がってしまいました。
結構、出血が多かったので歯科医による医療ミスかと思ってしまいましたが、歯科医の説明では「歯肉炎になっていますね」ということでした。
娘は八重歯があり、前歯にガタつきがある歯並びです。歯磨きの習慣は時々忘れることもありますが、朝と寝る前はやっています。
子供が歯肉炎になる原因と治し方を教えてほしいです。よろしくお願いします。
回答:ブラッシングが不十分、磨き残しが原因と考えられます
質問に回答します。
歯医者で歯のクリーニング中に出血されて、驚かれたかもしれませんね。
歯茎からの出血は、歯科医の医療ミスではなく、歯肉炎のサインです。歯肉炎になっている場合、歯のクリーニング中に出血することがよく起こります。
歯肉炎は大人がなるイメージがあるかもしれませんが、近年は子供が歯肉炎になるケースが増えており、決して珍しいことではありません。
2023年6月23日に公表された厚生労働省の「令和4年歯科疾患実態調査」によれば、5歳から14歳の子供の歯肉炎の有病率は、27.7%です。
▽年代別にみる子供の歯肉炎の有病率
- 5歳~8歳|24.2%
- 9歳から12歳|29.8%
- 13歳から14歳|31.2%
歯肉炎とは、歯周病の初期段階の症状と思っていただければ分かりやすいでしょう。
日頃の歯磨きで歯ブラシが歯茎の境目までしっかり届いていない場合、歯周病菌によって歯茎が炎症を起こし、歯茎が赤くなって腫れたり、歯磨きをした時に出血することがあります。
歯並びに八重歯があったり、歯列がガタガタしている叢生(そうせい)という不正咬合がある場合、表面がデコボコしているのでブラッシングしにくく、磨き残しが多くなります。
歯肉炎を予防するには、朝と夜の一日2回、毛先が柔らかい歯ブラシとフッ素入りの歯磨き粉、フロスを併用して、約3分くらい丁寧にブラッシングすることが大切です。
子供が自分で歯磨きをした後は、保護者様が仕上げ磨きを手伝いながら、歯ブラシを歯と歯の間にあてて小刻みに動かし、優しくブラッシングしましょう。
歯肉炎の予防には毎日の歯磨き習慣のほか、歯科医院で定期的な検診を受けて、歯肉炎の症状がないか診てもらい、歯のクリーニングをしてもらうことも大事です。
歯肉炎の症状は本人の自覚症状がほとんどなく、出血したときに驚いて初めて気が付くパターンですから、保護者様は仕上げ磨きの際に、子供のお口の中をチェックしてあげてください。
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【保存版】子供の年齢別!家庭での歯のケア方法を歯科医が徹底解説! – 子ども 歯の矯正(院長ブログ)
子供の歯肉炎とはどんな症状?
「歯肉炎」とは歯肉に炎症が起きていて、歯茎が赤く腫れていたり、出血しやすくなっている状態のことをいいます。
健康的は歯肉の色はピンクで引き締まっていますが、歯肉炎になると歯肉の縁が赤く腫れ上がっていて膨らみ、触るとブヨブヨした感じです。
歯肉炎になっても本人の自覚症状はほとんどありませんが、食事で硬いものを食べた時や歯磨きをしている時に出血した場合、歯肉炎になっている可能性が高いです。
歯肉炎になる原因は歯肉に付着しているプラーク(歯垢)や汚れですから、丁寧なブラッシングをしていれば、プラークや汚れを除去することができ、歯肉炎は自然治癒が可能です。
しかし、歯並びがガタガタの叢生や歯の重なり合いがある部分では、歯ブラシだけではきれいに除去するのは難しく、汚れが固着してしまい、歯肉炎が悪化しやすいので注意が必要です。
歯肉炎が進行すると、将来、歯の周りにある歯周組織まで炎症が広がり、「歯周病」へと進行して歯周ポケットが深くなり、最終的には歯が抜け落ちてしまう結果になります。
一度、歯周組織が壊されると元には戻ることはなく、近年、歯周病は身体へも悪影響を及ぼすことが分かっています。
子供のうちは歯肉炎から歯周病へ悪化することはほとんどありませんが、大人になって歯周病にならないように子供のうちから予防しておくことが大切です。
歯肉炎は痛みを感じず、本人は気づきにくいため、保護者が仕上げ磨きの際にお口の中を見て出血がないかどうか確認してあげてください。
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子供が歯肉炎になる原因
子供が歯肉炎になるのは主にブラッシングが不十分であることが原因です。
歯磨き習慣が付いていない子供や歯磨きをしていても不十分な場合、お口の中の細菌が、食べかすなどを栄養にして、歯垢(プラーク)という白い菌の塊を作り出します。
歯と歯の間は歯ブラシの毛先が届きにくく、歯垢が溜まりやすいので、歯に付着したプラークを放置していると歯ぐきが炎症を引き起こして、赤み、腫れ、出血などを引き起こすのです。
歯の生え変わり時期は、乳歯と永久歯が混在していますので、歯列がデコボコになりやすく、歯が抜けている部分もあれば、すき間がある部分もあり、歯が磨きにくいでしょう。
歯ブラシだけでは上手く歯垢や汚れを除去できない箇所がありますので、磨き残しができやすくなり、それが原因で歯肉炎になってしまうのです。
また、新学期や転校、受験などによって子供が過度なストレスを感じていると、体の抵抗力や免疫力が落ちて、細菌に感染しやすくなり、歯茎が腫れることがあるので注意が必要です。
子供がなりやすい歯肉炎の種類
子供がなりやすい歯肉炎は以下の4つの種類があります。
①萌出性歯肉炎
永久歯の奥歯が生えてくる時(6歳臼歯や12歳臼歯など)、年齢でいえば6~7歳頃、12歳頃に、奥歯の歯茎に一時的な炎症の症状「萌出性歯肉炎」が起こることがあります。
永久歯が生え始めてから完全に生え終わるまで、歯ぐきに歯の一部が埋まった状態になるので、歯磨きが難しくなり、特に奥歯は歯垢と汚れが残って歯肉炎が生じやすいのです。
歯が完全に生え終わる頃には歯肉炎の症状が治まり、炎症は一時的なものですが、歯肉の腫れや痛みが強い場合は、抗生剤や鎮痛剤の投与と治療が必要になります。
お口に歯垢と汚れが溜ると虫歯リスクも高まりますので、保護者様はしっかりと仕上げ磨きを欠かさずにサポートしてあげてください。
②不潔性歯肉炎
「不潔性歯肉炎」とはその名前の通り、歯磨きが不十分で歯垢をしっかり除去できず、歯垢が溜って細菌が増加し、口腔内が不衛生となって、歯茎に炎症が生じる歯肉炎のことです。
子供の歯肉炎で最も多いタイプになります。歯茎が赤くなって腫れたり、ブヨブヨとした状態になり、歯磨きをすると出血することがあります。
丁寧にブラッシングをし、歯垢や汚れを取り除くことで比較的早く改善されますが、放置すると歯石になってしまうので、定期的に歯科医院で歯のクリーニングが必要です。
子供は歯磨き習慣が付いていても、子供は力加減が分からず、ゴシゴシと力を入れてしまうことがあり、歯茎を傷つけてしまい、傷口から歯肉炎になるケースもありますので注意しましょう。
③思春期性歯肉炎
「思春期性歯肉炎」とは、小学校高学年~中学生頃(10~15歳)の思春期に生活の変化やホルモンバランスの乱れによって起こる歯肉炎のことで、歯茎が腫れて出血することがあります。
エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌量が増えて、歯肉への血流量が活発になるために起こり、男子より女子に起こりやすい傾向があります。
丁寧な歯磨きと歯科医院でのクリーニングによって症状は改善されますが、日頃から規則正しい生活習慣、栄養バランスが取れた食生活など、ホルモンバランスを安定させましょう。
④若年性歯周炎(侵襲性歯周炎)
「若年性歯周炎(侵襲性歯周炎)」とは前歯と第一大臼歯周辺に多く見られ、30代前後の世代に生じる歯周炎ですが、早ければ小学生や中学生でも発症することがあります。
通常、歯周病は時間をかけて徐々に進行しますが、「若年性歯周炎(侵襲性歯周炎)」は子供でも歯周病になるスピードが早く、歯周組織を急速に破壊してしまうのが特徴です。
歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けてしまい、吸収されて歯の移動、動揺が起こり、歯周ポケットが深くなるので、定期的な歯科検診を欠かさず、早期発見と早期治療が大事です。
「若年性歯周炎(侵襲性歯周炎)」は子供の頃に歯肉炎にかかって、そのまま放置してしまった場合に発症するので、子供のうちに歯科医院に検診を受けることが大切と言えます。
子供の歯肉炎の治療法
子供の歯肉炎予防には日頃の歯磨き習慣が大切ですが、もし歯肉炎になってしまったら、なるべく早く歯科医院に行き、歯垢(プラーク)をしっかり除去してもらう必要があります。
歯垢が硬くなった状態の歯石が付いていれば、スケーラーと呼ばれる水と振動の出る専用の機械を使い、歯ブラシでは取り切れない歯石を除去していきます。
歯科医院に早く診てもらえば、歯茎の炎症を早期に抑えることができますので、出血があったり、歯茎がぶよぶよしている場合は、なるべく早く歯科医院に診てもらいましょう。
子供の歯並びと歯肉炎の関係
日頃、歯磨きをちゃんとやっていても、歯並びがガタガタしていたり、歯と歯の重なりが多い部分は歯垢や汚れが完全に取れないことがあります。
子供の歯並びと歯肉炎とは関係があり、乳歯列期から混合歯列期にかけては歯が抜けたり、歯と歯の間にすき間ができるので、歯並びが安定しない時期になります。
歯の生え変わり時期は歯ブラシが届きにくい部分があり、歯垢が蓄積しやすい環境になりますので、歯肉炎になる可能性が高くなるのです。
歯のセルフケアは、歯ブラシのほか、子供用のデンタルフロス、歯間ブラシなどを併用して歯と歯の間もキレイに除去し、歯科医院で定期検診を受けることが大切です。
子供に出っ歯(上顎前突)や受け口(下顎前突・反対咬合)の歯並びがみられる場合、口が自然に閉じられずに口内が渇いて、細菌が歯や歯肉に付着して繁殖することがあります。
▽子供の不正咬合について詳しくはコチラ!
子供の不正咬合は全体の60%以上って本当?5つの種類・原因・治療法について解説! – 子ども 歯の矯正(院長ブログ)
子供の歯肉炎対策に小児矯正が効果的な理由
歯並びに問題があると、歯肉炎や虫歯にもなりやすい口腔内環境となり、顎の成長にも大きく影響されますので、子供のうちから矯正治療を検討すると健康な歯を守ることができます。
子供のうちから矯正を始めることで、顎骨の成長・発達を正しい方向へ促して、コントロールしながら歯並びと噛み合わせを改善できるのがメリットです。
正しい噛み合わせを子供のうちに獲得し、上下の顎の成長を促すことで、お口元の印象がよくなるのはもちろん、歯肉炎、歯周病のリスクを低減することにも繋がります。
歯列矯正は大人になってから矯正するよりも、子供のうちから始めた方が、将来的に健康な歯を抜歯するリスクを減らし、痛みや違和感を抑えてスムーズに治療ができるのです。
▽子供の歯並びと費用についてはコチラ!
子供の歯並びのご相談・定期健診は「ABC Dental」へお気軽にどうぞ
子供の歯肉炎は、日ごろの丁寧な歯磨きと定期的な歯科検診・クリーニングなどの処置を受けることで、多くの場合、早期に改善します。
ただし、乳歯と永久歯が混在している小学生の時期はブラッシングが難しくなるので、保護者様は仕上げに磨きのサポートとお口のチェックをしてあげることが大切です。
当院では、3歳から開始できるマウスピース治療を提供しており、口呼吸の改善や正しい舌の位置、使い方を覚えるお口のトレーニングを同時に行って、根本からの改善を目指します。
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乳歯がある時期に矯正する意味とは?永久歯が生える前に治療するメリット – 子ども 歯の矯正(院長ブログ)
まとめ
歯医者でのクリーニングは、子供の歯肉炎の治療のためにも必要ですので、セルフケアと早めの対策で健康な歯を守りましょう。
お子様の歯並びが気になる方は、ぜひお子様と一緒に大田区田園調布にある小児歯科・矯正歯科専門「ABC Dental」の無料カウンセリングをご利用くださいませ。
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