「親知らずは子供の頃から育ち始めて、10代後半から20代前半に生えてきたときには歯茎が腫れたり、痛みが出ることが多く、将来の歯並びに影響することがあります。子供のうちに抜歯すべきか、適切な抜歯の時期について解説。」
みなさん、こんにちは!
東京都大田区田園調布にある小児歯科・矯正歯科専門の歯科医院「ABC Dental」の院長です。
親知らずは大人になってから抜歯するケースが多いため、「子供のうちは親知らずは心配ないでしょう」とお考えの保護者様も多いかもしれません。
実は、親知らずは子供の頃から育ち始めて、10代後半から20代前半に生えてきたときには歯茎が腫れたり、痛みが出ることが多く、将来の歯並びに影響することがあります。
今回は、親知らずが歯並びに与える影響、子供のうちに抜歯すべきか、適切な抜歯の時期について小児歯科医が解説していきますので、ぜひ最後までご一読ください。
▽先読み!この記事で分かること
- 親知らずは子供の歯並びに影響することがある
- 最終的に抜歯の必要性は医師が判断します
- 放置すると起こりえる5つのトラブル
- 歯胚の段階で早期抜歯をする方法
Table of Contents
ご質問:親知らずは子供の歯並びに影響しますか?
ご質問をいただきました。
ご質問者様:10歳の娘さんのお母様
小学4年生の娘がマウスピース矯正を検討しています。親知らずについて質問があります。
歯列矯正をしても、将来、親知らずが生えてきた時に歯並びが悪くなってしまいませんか?
小児矯正を開始する前に親知らずを抜歯した方が良いですか?回答お待ちしております。
回答:歯並びに影響を与える可能性があります
質問に回答します。
親知らずは子供のうちにはまだ見えませんので、ご本人も保護者様もあまり気にされないかもしれませんが、20歳前後で生えてきたときに、歯並びに悪影響を与えることがあります。
親知らずは骨格や歯並びがある程度完成し、全ての永久歯が全て生え揃った後に、一番奥にある奥歯として生えてきます。
親知らずがキレイに生えてきて問題が起こらないケースは少なく、ほとんどの場合、歯列が乱れたり、虫歯や歯周病などのリスクが上がるなどデメリットの方が多いです。
特に親知らずが捻じれて埋まっていたり、将来的に歯列に影響があると歯科医師が判断した場合は抜歯する必要があります。
ただし、すべてのケースで親知らずを抜歯する必要があるわけではなく、完全に骨の中に埋もれていて、上下の歯がきちんと噛み合っている場合は抜歯する必要はありません。
親知らずがあること自体が問題なのではなく、親知らずが将来的に歯並びや口腔内環境に悪影響を与える場合は、抜歯をする流れになるでしょう。
親知らずを抜歯するかどうかは、歯科医師がお口全体の状態を撮影できるレントゲン写真(パノラマレントゲン)を確認し、最終的に抜歯の必要性を判断します。
親知らずは10歳以上になるとレントゲン写真で確認することができますので、一度、担当の歯科医師に相談し、親知らずの状態を確認することが大切です。
親知らずとは?
「親知らず」とは、上下の前歯の真ん中(正中)からに奥に向かって8番目の歯のことで、正式には「第三大臼歯」・「智歯(ちし)」とも呼ばれます。
親知らず以外の永久歯は15歳頃までに生え揃いますが、親知らずは乳歯の頃には存在せず、10代後半から20代前半になった時に、初めて永久歯として生えてくるケースがほとんどです。
太古の昔、人間は硬い木の実を食べたり、硬いものを噛んでいたので親知らずは必要な歯でしたが、現代は火を通して調理するようになり、顎が退化して親知らずが不要になりました。
親知らずは上下に2本ずつの合計4本ありますが、すべての歯が生えるわけではなく、上の親知らずだけ生えるケースが多くみられ、中には親知らずが全く生えてこない人もいます。
親知らずが形成される時期は?
一般的に、親知らずが生えてくる時期は10代後半から20代前半頃となり、遅い方の場合は30代になってからのケースもありますが、親知らずが形成される時期は5歳~6歳頃です。
5歳~6歳頃の子供の口の中を見ても親知らずの存在を確認できません。顎の骨の中で歯胚(歯の芽)が作られ始めたばかりの頃はレントゲン写真にもまだはっきり写りません。
8歳~10歳頃になると、石灰化し始めて、レントゲン写真に他の歯と同じように写るようになります。徐々に形成されて硬さも増してくると、17歳頃に骨の中で根の部分まで完成します。
親知らずと歯並びの関係
親知らずは一番奥に、最後に生えてきますので、お口の中に十分なスペースがなく、横向きに捻じれて生えてくるケースが多いです。
親知らずが斜めに生えてくると、隣り合っている奥歯を押して、余計な力をかけてしまうために圧迫されて痛みを伴ったり、歯茎が腫れたり、顎が痛くなるケースもあります。
そして、第二大臼歯が生えてくる12歳頃は周囲の骨や下顎骨が発育して、親知らずは下顎の骨に埋まった状態になりますので、この頃に歯並びに悪影響を与える可能性があります。
親知らずと歯並びは関係があり、子供の頃にすでに叢生や反対咬合といった不正咬合の症状がみられる場合は、大人になった時に親知らずが原因でさらに歯列が乱れる可能性が高いです。
現代の子供たちは食生活の変化により、昔と比べると顎が小さくなっている傾向にあり、親知らずが生える場所がなく、歯並びが悪くなるケースが増えています。
子供のうちは親知らずの心配をする必要はありませんが、大人になった時に親知らずが原因で前歯がガタガタになったり、前歯が飛び出したりするケースが起こりえるのです。
親知らずは歯列の乱れだけでなく、虫歯や歯周病リスクを上げるデメリットもありますので、歯並びが気になる方は、一度担当の歯科医へ相談されることをおすすめします。
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子供の不正咬合は全体の60%以上って本当?5つの種類・原因・治療法について解説! – 子ども 歯の矯正(院長ブログ)
親知らずを放置すると起こりえる5つのトラブル
親知らずをそのまま放置すると5つのトラブルを引き起こす可能性があります。
①歯列全体のバランスが崩れる
顎が小さく、歯がきれいに並ぶスペースが十分にない場合、親知らずが隣にある歯に割り込むような形で圧迫するので、歯列全体が乱れたり、前歯が出っ歯ったりすることがあります。
また、親知らずは斜めに(横向きに)生えてくることが多く、周囲の歯を押し出しながら、周囲の歯に余分な力をかけますので、全体の歯並びに悪影響を及ぼしてしまうのです。
親知らずによって歯並びが悪くなると、歯がデコボコになって見た目が気になる、噛み合わせが悪くなる、歯と歯の間に細菌が溜まりやすくなるといった問題に繋がります。
②智歯周囲炎
親知らずをそのまま放っておくと、親知らず周囲の歯茎が炎症する「智歯周囲炎」になりやすいので注意が必要です。親知らず特有の痛みが発生します。
磨き残しがあったり、親知らずの半分が顎の骨に埋まったままの状態である場合、親知らず周囲の歯茎に強い炎症を起こして腫れたり、周囲組織に広がって発熱することがあります。
③嚢胞(のうほう)
顎が小さく、親知らずが生えてくるスペースが足りない場合、顎の骨の中に埋まったまま、親知らずが生えてこない状態となり、その周辺に嚢胞(のうほう)ができることがあります。
④虫歯や歯周病のリスクが上がる
親知らずは一番奥歯になるので歯ブラシが届きにくく、親知らずと隣の第二大臼歯の間が狭いという理由もあって細菌や汚れが溜りやすく、虫歯や歯周病になるリスクが上がります。
歯茎に半分埋まっている親知らずはすでに虫歯になっていることも多く、歯科医師の判断で抜歯を勧められることがあります。
また、日常の疲れやストレスなどで体調が悪くなった時に、親知らずが突然腫れて痛むことがあり、口が開きにくくなる症状が引き起こされることがあります。
⑤強い口臭
親知らずが斜めや横向きに埋まっている場合、歯茎の溝の中に細菌が繁殖しやすく、ブラッシングが難しいので強い口臭を引き起こすことがあります。
親知らずは子供のうちに抜歯した方がいいの?
親知らずが原因で痛みや歯茎の腫れなど辛い経験をされた方は多いでしょう。
親知らずは大人になって痛くなってから抜歯するケースが多いですが、痛くなる前に抜いておくことで将来的な痛みや腫れなどのトラブルを防ぐことができます。
親知らずは噛む機能に携わっていないので、抜いても困ることはなく、むしろ将来に起こりえる様々なトラブルを予防するメリットがあります。
痛くなってから抜歯するよりも、痛みや炎症などのリスクを抑えて抜くことができるでしょう。
また、親知らずが生えてくる10代後半から20代前半の時期は、大学生から社会人になったばかりの頃ですから、見た目が気になって歯列矯正に興味を持たれる年齢でもあります。
親知らずが隣の歯を押して歯並びが悪くなったり、矯正治療中に親知らずが生えてくる可能性もありますので、痛くなる前の抜歯を検討される意義はあるといえます。
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小児矯正を始める前に親知らずは抜歯すべき?
親知らずは歯並びに悪影響を及ぼしたり、痛みや歯茎の腫れなど様々なトラブルを引き起こしますが、矯正治療前に必ず抜歯する必要があるわけではありません。
矯正治療を始めるにあたって、現時点で悪影響があると判断した場合、もしくは将来的に悪影響が及ぶ可能性がある場合は、親知らずを抜歯してから矯正治療を開始します。
親知らずがまっすぐ生えていて、レントゲン写真で周囲の歯に特に影響はなく、噛み合わせや顎などに影響がない場合は、親知らずを抜かずに残しておく判断になるかと思います。
矯正をする前に親知らずを抜く、抜かないかどうかは患者様一人ひとりのお口の状態によって異なり、最終的には歯科医が判断をします。
親知らずの抜歯の必要性については専門家の意見や専門分野によって異なることがありますので、複数の専門家の意見を聞いて総合的に判断されるとよいでしょう。
親知らずを抜歯した方が良いケース
一般的に親知らずを抜歯した方が良いケースは以下の場合です。
- 親知らずが横向き、斜めに生えている
- 親知らずが半分歯茎に埋まって生えている
- 隣の歯を押している
- 正しく噛み合っていない
- 歯列矯正のために歯を動かすスペースを作る
- 歯列全体のバランスを崩してしまう可能性がある
- 矯正治療に支障をきたす
- 虫歯または虫歯になる可能性がある
- すでに虫歯になってしまっている
- 痛みがある
親知らずは一番奥にあるため、歯ブラシが届きにくく、横向き・斜めに生えていたり、一部分だけ出ていると、さらに歯磨きが難しくなって、虫歯・歯周病のリスクが上がります。
親知らずが口腔内環境が悪化する原因になる、もしくは他の歯へ悪影響を及ぼす可能性が高い場合、矯正治療をするしないにかかわらず、抜歯した方が良いと判断されます。
親知らずを抜歯しなくても良いケース
以下のケースでは親知らずを抜歯する必要はありません。
- 親知らずが真っすぐ生えていて、上下正常に噛み合っている
- 周囲の歯や歯並び、骨などに影響がない
- 完全に骨の中に埋もれている
将来的にトラブルが起こりえないと判断された場合、親知らずを残しておくことで、将来入れ歯やブリッジなどの治療に生かすことができますので、抜歯する必要はありません。
親知らずを抜くのに最適な時期
親知らずは将来的に様々なトラブルを引き起こすため、歯の卵の段階である「歯胚」の状態の時に、早期に抜歯をする「ジャームエクトミー(Germectomy)」と呼ばれる抜去法があります。
これは通常、小児矯正をされる子供の下の親知らずに対して行われることが多く、歯胚の段階で早期抜歯をする方法です。
子供によって個人差はありますが、6歳から12歳頃に歯の元となる歯胚ができ始めますので、萌出する前に歯並びの乱れの原因になると判断された場合、必要に応じて抜歯を済ませます。
親知らずが大きくなってから抜歯をすると痛みが大きくなりますが、顎の骨が柔らかい子供のうちに抜歯をすると負担が抑えられ、将来的な歯並びの乱れを防ぐことに繋がります。
歯科医がレントゲンで歯の状態をチェックし、歯胚の状態、歯並びへの影響を考慮して、7〜10歳(小学校1年生〜4年生)くらいに早期抜歯を行うと適切なタイミングとなります。
子供の歯並びのご相談は「ABC Dental」へお気軽にどうぞ
歯並びが悪くなる前に親知らずを正しく対処することが重要であると言えます。
歯科矯正が終わった後に親知らずが生えてきて抜く方も多いですが、抜歯によってきれいな歯並びが崩れてしまった場合、再度矯正する必要が出てきます。
親知らずがきれいに生えるケースは少ないので、リスクを抑えたいならば、早期に抜歯検討が必要です。子供の歯並びが気になる方は、歯科医に相談しましょう。
お子様の歯並びが気になる方は、ぜひお子様と一緒に大田区田園調布にある小児歯科・矯正歯科専門「ABC Dental」の無料カウンセリングをご利用くださいませ。
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まとめ
親知らずは萌出前に抜歯をしておくことで、将来的な様々なトラブルを防げる可能性が高まりますので、まずはかかりつけの歯科医院に相談し、診断を受けることをおすすめします。
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