小児矯正だけでは治せない歯並びの症例と理由を解説。骨格的問題や先天性欠如など、難症例のケースをご紹介。早期発見・早期治療の重要性と対処法をお伝えします。
こんにちは!
大田区田園調布にある、子ども専門 小児歯科・矯正歯科「ABC Dental」の院長です。
子供のうちにまっすぐに歯が並ぶ土台を作っておくことで、大人になった時に理想的な噛み合わせと見た目も美しい歯並びを実現することが可能です。
大体の小児矯正の症例では、マウスピース矯正や従来のワイヤー・ブラケット矯正といった治療で歯並びを治すことができます。
ただし、お子様の骨格性に問題があったり、お口の状態によっては小児矯正だけでは治療完了が難しいケースがありますので、今回はそんな難易度の高い症例についても詳しく解説していきます。
歯医者の歯並びチェックで「小児矯正だけでは治せない」と言われた時の対処法についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
▽本記事の先読みポイント
- 小児矯正だけでは完了できない症例もある
- 骨格的な問題、大きなズレは小児矯正だけでは難しい
- 顎の骨の状態が健康かどうかはポイント
- 歯科医院の歯並び検査は早めに受けたほうが小児矯正だけで完了できることが多い
Table of Contents
小児矯正だけでは完了できない症例
すべてのケースで小児矯正だけで治療完了できるわけではなく、小児矯正だけでは治せない難症例なケースや、小児矯正と成人矯正の両方が必要なケースがあります。
では、小児矯正だけでは治療困難となる難症例とその具体的な理由について解説します。
骨格性に問題がある
小児矯正では、不正咬合となる舌の癖や悪習慣を改善して、正しく並ぶ歯並びの土台を作っていきますが、上下の顎の位置に大きなズレがあり、前後と左右に差がある場合など骨格的に顎に大きなズレがある場合、小児矯正だけで治療完了を目指す場合は、顎の成長が始まる前の早い段階で治療開始する必要があります。(3〜5歳に開始するなど)
例えば、上顎が前に大きく突き出ている「上顎前突(いわゆる出っ歯)」や、下顎の骨が極端に突出している「下顎前突(いわゆる受け口)」といった、前後のバランスが悪い歯並びは、比較的難しい症例となりやすい可能性があります。
骨格的な問題による不正咬合が見られる場合、もしも低年齢からの小児矯正を開始できなかった場合は、まず外科手術によって顎の骨を正常な位置に整える形成手術を行った後に、適切な矯正治療を併用する必要があります。
生まれつき歯の数が足りない「先天性欠如」の症状がある
本来、永久歯の数は親知らずを除くと全部で28本生えてきますが、何らかの理由で生まれつき歯の数が足りない状態を「先天性欠如(せんてんせいけつじょ)」といいます。
日本小児歯科学会のデータによれば、約10人に1人(10.09%)の割合で発生しており、前から2番目または5番目の歯に多く見られる症状です。
先天性欠如は乳歯の下に永久歯の元となる歯胚(しはい)を作ることができないため起こります。歯が足りないということは、噛み合わせが悪くなり、ものをきちんと噛むことが難しく、歯並びも悪くなる傾向にあります。
先天性欠如の症状がみられる場合は、基本的には乳歯が抜けないことが多いため、乳歯を使い続けるのが基本の第一選択となり、その場合は小児矯正で矯正治療をしていくことは可能です。ただし、何らかの形で、永久歯の上にある乳歯が存在しなかったり、乳歯が早い段階で脱落してしまった場合は、安定した嚙み合わせに改善するため、ブリッジ、インプラントといった補綴的治療が必要になるケースはありえます。
お子様の先天性欠如が見られる箇所や上下の顎の位置によっても、治療方針は変わってきますので、歯科医院でレントゲン写真を撮影してもらい、早期に発見することが大事です。
※永久歯の先天性欠如が6歯以上ある場合、厚生労働省が定める先天疾患「先天性部分無歯症」に認定されますので、補綴的治療と矯正治療や補綴的治療に健康保険が適用されます。
歯茎に埋まっている歯「埋伏歯」がある
本来生えてくるはずの時期に永久歯が生えてくることができず、歯茎の中や骨に埋まったままの状態にある歯を「埋伏歯(まいふくし)」といいます。
本来生えるべき時期に永久歯が生えてこないため、その空いたスペースに両隣の歯が倒れ込んできて、歯並びと噛み合わせに悪影響を及ぼします。
「埋伏歯」がある場合、矯正をする前もしくは矯正中に、歯を引っ張り出す「牽引(けんいん)」という治療を行うため、歯茎を切開する「開窓」という外科処置が必要な場合があります。
「埋伏歯」になる原因は、顎の骨が小さい(先天的な問題)、歯と骨が癒着している、乳歯の虫歯で喪失した、外傷などいくつかの原因が考えられ、人それぞれ異なります。
なかなか永久歯が生えてこない…と心配な方は、一度、歯科医院でレントゲン撮影を行い、埋伏している歯と歯根の状態を確認してもらうと良いでしょう。
「埋伏歯」に関しては小児矯正・成人矯正どちらの場合でも矯正治療だけでは対応できないため、追加治療として外科的な処置で対処する必要があります。
重度の歯周病、糖尿病
お子様に重度の歯周病、小児糖尿病の症状がみられる場合、歯を支える組織(歯周組織)が弱っているために、歯列矯正の適応外になる可能性があります。
小児矯正を始めるにあたって、顎の骨の状態が健康である必要がありますが、歯周病や糖尿病になると、顎の骨がもろい状態となり、矯正が困難と診断されるかもしれません。
甘いものを頻繁に食べる習慣があるお子様は歯磨きがきちんとできていないと、歯茎に炎症が起こる歯肉炎から歯周病を発生し、糖尿病リスクも高まるので注意が必要です。
ただし、食生活を改善し、口内環境を整えて、顎骨の状態が健康になれば、小児矯正の治療を受けていただけるようになります。
その他の症例
その他、小児矯正だけでは治療完了できない症例としては、顎の成長がほとんど完了してしまったため治療完了が難しいと判断されることがあります。
小児矯正はできれば3〜5歳、遅くとも8〜9歳より前には開始できるとベストです。ある程度年齢が進んで顎の成長が完了してしまうと、お子様の歯の生え変わりの状態、顎の骨の状態によっては適切なタイミングではないと判断されることがあるのです。
その他には、アレルギー体質がある場合、矯正装置を装着すると金属や樹脂に反応して、皮膚や口腔の粘膜にアレルギー症状が起きる可能性があるので治療が困難に場合があります。
小児矯正のみでは対応できない具体的な歯並びは?
ここまで小児矯正のみでは難しい症例を見てきましたが、具体的に矯正できない歯並び(不正咬合)の種類をみていきましょう。
基本的に小児矯正できない歯並び(不正咬合)はありませんが、先ほども説明したように、骨格的な問題によって歯列が乱れている場合は、小児矯正の開始年齢が遅い場合、追加で二期治療(歯を動かす治療)が必要となる可能性が高いです。
▽開始年齢が遅いと小児矯正のみでは対応できない歯並びの例
- 上顎前突(いわゆる出っ歯)
- 下顎前突(いわゆる受け口)
- ガミースマイル(笑った時に歯茎が4㎜以上見える)
- 過蓋咬合(噛み合わせが深い)
上記の不正咬合で骨格の大きなズレや大きさに問題がある場合は、開始年齢が遅いと矯正治療だけでは困難と判断されることがあり、まずは骨格からアプローチする外科的な治療が優先されます。
歯医者に「小児矯正できない」といわれた時の対処法
小児矯正をやってみたいけれど、歯科医院に相談したら、「矯正できない」と言われてお困りの方もいらっしゃるでしょう。ここからは、できないと言われた時の対処法をご紹介します。
セカンドオピニオンを受ける
初めに歯並び相談をした歯医者に「今じゃない」「小児矯正はできない」と言われても、すぐに諦める必要はありません。他の歯科医師にも意見も聞いてみましょう。
この症例では外科矯正しかない、と判断する歯科医師もいれば、低年齢から小児矯正で顎の成長をコントロールしながら矯正治療を進めていくと判断する歯科医師もいるでしょう。
歯科医師によって治療方針、計画は変わってきますので、他の歯科医院でも歯並び相談と精密検査を受けて多角的な意見を参考にして、適切な治療を決めることが大切です。
小児矯正の最大のメリットは体の成長に合わせて、顎の発育をコントロールしながら、根本的な歯並びの改善に繋がるという点です。
子供の顎の成長は8歳くらいで後半から終盤に近づいてくるので、顎の骨の発育が終わってしまうと小児矯正のみで治療完了することが難しくなるため、開始時期はとても重要です。
小児矯正のみで治療可能かどうか確認するには?
お子様の歯並びが悪い気がするけど、矯正できるかな?と心配な方は、まずは歯科医院に相談し、歯並びの状態を見てもらって、精密検査を受けることをおすすめします。
歯科医院の歯並び検査では、口腔内のスキャンやレントゲン撮影、3次元的に口腔内を撮影できるCT撮影などを行って、不正咬合の原因に骨格的な問題があるか見極めることが可能です。
お子様の日常的な習慣やクセによる歯的な問題の場合、小児矯正が適応されますが、骨格的な問題がある場合は難症例と判断されますので、今後の治療法を検討することができます。
うちの子矯正できるかな?と気になったら、まずは小児矯正を行っている歯科医院に相談し、精密検査を受けてみましょう。
小児矯正を失敗しないために大事なこと
小児矯正の適応と判断されて、治療を開始しても、思うように治療が進まず、歯並びが良くならなかった、失敗した…と後悔されるケースも少なくありません。
その理由は複数ありますが、最も多いのはお子様本人が矯正装置を適切な装着時間を守ることができず、治療計画がきちんと進まなくなってしまったケースです。
本人の意欲が低下してしまったり、途中で面倒になって諦めてしまったり、家庭の事情などで歯医者に通院できなくなった場合は、思うような治療結果を得ることができなくなります。
ご自身での管理は治療中はもちろんのこと、歯並びがきれいに整った後もリテーナー(保定装置)を約2年間使用していただき、長期的な管理が必要になってきます。
時間とお金をかけて小児矯正をすることを考えると、最後まで無理なく続けることができるかよく考えて治療を始め、最後にはキレイな歯並びを実現できるようにしたいですね。
小児矯正のご相談・歯並び検査はABC Dentalへ
小児矯正に興味をお持ちの方、適応されるかご心配な方は、子ども専門 小児歯科 矯正歯科のABC Dentalまでお気軽にご相談ください。
当院では、お子様一人ひとりの口腔の健康状態を全体的に観察し、精密検査を行うことで、歯並びが悪くなる原因を突き止めて、適切な治療法を提案いたします。
成長期だからこそできる小児矯正の強みを最大限生かして、問題の根本原因への徹底的なアプローチを心がけています。
小児矯正できない症例と理由のまとめ
今回は、小児矯正できない症例、適応外のケースとその理由についてご紹介しました。
矯正できない問題がある場合、早期発見・早期治療をするためにも、早めに歯科医院に相談して口腔状況を見てもらい、医師から説明を受けることが大事なポイントです。