マルチファミリーなどの小児マウスピース矯正の特徴とメリットを解説。
こんにちは!
大田区田園調布にある、子ども専門 小児歯科・矯正歯科「ABC Dental」の院長です。
近年、子供の矯正(小児矯正)の重要性が世間的に少しずつ認知されるようになり、「子供のうちに歯並びを治してあげたい」と興味・関心を持たれる親御様が増えてきました。
小児向けマウスピース矯正装置にはいくつか種類がありますが、今回の記事では、最近ご質問をよく受ける「マルチファミリー」の特徴・メリット・注意点について解説していきます。
小児用マウスピース矯正「マイオブレイス」との違い、また歯列の横幅を横に拡げ、スペースを作る目的で使用される「拡大床」についてもご紹介いたします。
小児向けマウスピース矯正にご興味のある親御様、歯並び矯正についてご関心のある方はぜひ参考にして頂けたら幸いです。
Table of Contents
小児向けマウスピース矯正装置「マルチファミリー」とは?
「マルチファミリー」とは、日本の医療機器メーカーである株式会社JM Orthoが提供している子供用マウスピース矯正装置です。
程よい硬さと弾力のあるシリコーン製のマウスピースをお口に装着することで、口周りの筋肉が正しく機能するための「筋機能のトレーニング」が可能となります。
乳歯と永久歯が混在している混合歯列期に歯並びが悪くなる原因を取り除きながら、歯が生えてくる方向を正しい位置へと誘導していきます。
※治療期間は患者様によって個人差がありますが、約1年~2年程度です。
「マルチファミリー」期待できる効果
「マルチファミリー」はマウスピースを装着することで、口周りの筋肉を鍛えて、顎のバランスを正しい方向へ促し、歯が正しい位置に並ぶように調整していきます。
よくある不正咬合、叢生(歯と歯が重なり合っている)、上顎前突(出っ歯)、過蓋咬合(深い咬み合わせ)、開咬(前歯が噛み合わない)になる原因、悪習慣を取り除いていきます。
顎のバランスを健全に促すため、自然できれいな歯並びに整えられて、大人になった時に「後戻りするリスク」を抑えることができるのも嬉しいポイントです。
その他にも、歯並びが整うことで、ブラッシングがしやすくなり、虫歯リスクが軽減されるメリットもあります。
「マルチファミリー」の装着時間は?
マウスピースの装着時間は「日中1~3時間」と「就寝時」のみとなっており、一般的なマウスピース矯正と比べると装着時間は短めです。
例えば、小児用マウスピース矯正「インビザラインファースト」の場合は「1日に20時間以上」の装着時間が必要となり、装着時間を守らなければ、満足のいく治療効果を得られない可能性があります。
「マルチファミリー」は日中は1~3時間装着するだけでよいため、学校で装着する必要はなく、子供のストレスが軽減されて、小児矯正を始めやすいといえるでしょう。
「マルチファミリー」の対象年齢は?
子どもの矯正は、2段階の治療時期があり、「第一期治療」と「第二期治療」に分かれます。
「マルチファミリー」は主に「第一期治療」に適応され、対象年齢は5歳~10歳です。
「第一期治療」
- 6歳から12歳頃
- 永久歯に生え変わるまでの混合歯列期(乳歯と永久歯が混在している時期)
「第二期治療」
- 12歳程度
- 永久歯に生え変わるタイミング
「第一期治療」では、顎の骨が急速に成長する段階にあり、顎の骨が柔らかく、顎の横幅を拡げて、歯並びが正しい位置に並ぶための準備を整えることができます。
※13歳以上の患者様に適応できるタイプもあり、適応年齢・治療目的によって選択することが可能です。
「マルチファミリー」の種類
「マルチファミリー」の種類をご紹介します。
2024年4月現在、「マルチファミリー」の装置は全部で5種類です。患者様の歯並びの状態、年齢、使用目的によって選択することができ、段階的に歯並びを整えていきます。
▼「マルチファミリー」の種類
Multi-S | Multi-T | Multi-T2 | Mult-TB | Multi-P2 | |
対象年齢 | 5歳~8歳 | 6歳~10歳(混合歯列期:第一大臼歯萌出後) | 6歳~10歳(混合歯列期:第一大臼歯萌出後) | 13歳以上の矯正治療(ブラケット装着)中の方 | 9歳~13歳 |
使用目的 | 前歯部(切歯、側切歯)の萌出誘導 | 前歯部(切歯、側切歯、犬歯)の萌出誘導 | 前歯部(切歯、側切歯、犬歯)の萌出誘導 | 下顎の成長促進と顎関節のアンロック | 前歯部(切歯、側切歯、犬歯、小臼歯)の萌出誘導 |
サイズ | 1種類1サイズ | 1種類1サイズ | 1種類1サイズ | 1種類1サイズ | 各8段階 |
ポイント | 上下顎の4前歯のみを誘導 | 前歯・犬歯を誘導 | 歯牙コントロール | 他多くの装置と併用可能 | ブラケットを付けた状態で使用 |
「マルチファミリー」の費用相場
「マルチファミリー」の矯正治療は保険適用外となる自由診療になりますので、矯正費は歯科医院それぞれの料金設定によって異なり、総額の費用相場も変わってきます。
あくまでも目安になりますが、30万円~50万円あたりが一般的です。
「第一期治療」で完了する場合は、費用を抑えることができますが、「第二期治療」まで進む場合は矯正期間が長くなり、治療費が高くなります。
「マルチファミリー」の明確な費用を知りたい方は、取り扱いのある歯科医院へ歯並び・矯正の相談を受けることをおすすめします。
歯並びの状態を診てもらい、口腔内写真とレントゲン撮影、歯の移動をシュミレーションで把握することができます。矯正治療にかかる期間、合計金額を提示してもらいましょう。
「マルチファミリー」の注意点
「マルチファミリー」は歯並びが悪くなる根本的な原因にアプローチできる優れた矯正方法ですが、いくつか注意点があります。
▼「マルチファミリー」の注意点
- 装着時間を守る必要がある
- 適応できない症例もある
- 取り扱いがある歯科医院がまだ少ない
「マルチファミリー」のマウスピース装着時間は「日中1~3時間」と「就寝時」と短い時間設定となっています。
一日の装着時間が短いため、お口の中で異物がある違和感に慣れるまでに時間がかかることがあり、お子様が自分で装着する習慣を付けるまでにも時間がかかる可能性があります。
「マルチファミリー」に限らず、全てのマウスピース矯正は決められた装着時間を守らなければ、口周辺の筋肉が鍛えられず、正しい位置に歯並びを促すことができなくなるので要注意です。
「マルチファミリー」は自分で取り外し可能で装着時間が短いからこそ、お子様自身がしっかりと自己管理できることが不可欠となり、保護者様のご協力も必要です。
そして、「マルチファミリー」は全ての症例に適応されるわけではなく、重度の歯並びの場合は適応できないことがありますので注意が必要です。
「マルチファミリー」は歯科医院によっては取り扱っていないことがあります。気になる方は、事前に歯科医院に確認しておきましょう。
【比較】「マルチファミリー」と他の小児用マウスピース矯正との違いは?
ここまで「マルチファミリー」の特徴をご紹介していきましたが、「マルチファミリー」は数ある小児用マウスピース矯正装置の一つです。
当院では、歯並びが乱れる根本的な原因にアプローチすることができる有効な治療に取り組むため、【拡大床】【マイオブレイス】【インビザライン】を取り扱っています。
※当院ではマルチファミリーの装置は使用しておりません。
▼「マルチファミリー」と他の小児用マウスピース矯正との違い
マルチファミリー | 拡大床(床矯正) | マイオブレイス | インビザライン | |
メーカー(国) | 日本 | 国内外に多数 | オーストラリア | アメリカ |
実績・歴史 | 少ない | 多数あり | 多数あり | 多数あり |
装着時間 | 日中1~3時間、就寝時 | 1日12~14時間 | 日中1~2時間、就寝時 | 1日20時間以上 |
拡大作用 | 少ない | かなり大きい | 大きい | 大きい |
治療範囲 | 狭い | 広い | 広い | 広い |
治療費用 | 約30万円~50万円 | 約30万円~40万円 | 約20万円~50万円 | 約30万円~50万円 |
小児用マウスピース矯正を使用する目的は、歯を直接動かすというよりも、歯並びが悪くなる根本的な原因となる悪い習慣、舌の癖などを正しく改善することがメインとなります。
当院で取扱っている「マイオブレイス」は顎の健全な成長を促し、歯並びを整える準備をします。
一方で、拡大床(床矯正)は、積極的な拡大作用が期待できる矯正法です。歯を外に向かって拡げて、顎の横幅が拡がるので、スペースが生まれて、歯列が正しく並びやすくなります。
世界100カ国以上で認められた治療法「マイオブレイス」
出典:マイオブレイス
1989年にオーストラリアで確立された小児矯正治療法「マイオブレイス」は筋機能矯正システムを取り入れたマウスピース型の矯正装置です。
「マイオブレイス」は独自の設計技術と幅広い症例数の実績があり、世界100か国以上で導入されている最先端の矯正治療になります。
▼「マイオブレイス」の特徴
- 対象年齢は5歳~12歳
- 口の周りの筋肉のバランスを整える
- 歯並びが悪くなる根本的な原因にアプローチする
- 装着時間は日中1時間と就寝時
- 痛みが少ない(個人差あり)
- 口腔周囲筋のトレーニングを行う
- 後戻りのリスクが少ない
マウスピース型装置を日中1~2時間と就寝時、正しい方法で装着し、ご自宅で筋肉のトレーニングも一日数分間行っていただきます。
トレーニングによって舌や唇の癖、口呼吸などの習慣を改善し、根本的な原因を解決するため、キレイな歯列だけでなく、顎の正しい発育、整ったお顔立ちへと促します。
当院ではマイオブレイスシステムに積極的に取り組んでおり、スタッフが一丸となってトレーニングの指導、保護者様とお子様のモチベーションを高める工夫を凝らしております。
対象年齢は5歳~12歳ですが、当院では3歳の乳歯列期のお子様も良い結果が得られた症例が多くあります。
歯列の幅を外側に拡げる装置「拡大床(床矯正)」
現代の子どもたちは栄養状態は大変良いですが、柔らかい食材を食べることが多く、咀嚼回数が減っているため、歯が生える土台となる顎の骨の発育が遅れるケースが増えています。
上下の顎の骨がバランスよく適切に成長することができないと、狭い顎のスペースに大きな歯が生えるスペースがなく、歯と歯が重なり合ったり、歯並びがガタガタの状態になります。
子どもの顎が成長している段階で適切な方向へ促すためには、顎のスペースを拡げる拡大作用「拡大床(床矯正)」という矯正治療が適しています。
「拡大床(床矯正)」はお子さまの成長に合わせて、顎の骨を広げていき、歯が正しく並ぶスペースを確保することができます。ほとんどの場合、歯を抜く必要はありません。
▼「拡大床(床矯正)」の特徴
- 対象年齢は5歳~12歳くらい
- 幼児でも簡単に取り外し可能
- 装着時間は1日12~14時間
- 歯科医師の指示通りに、拡大ネジを調節する
- 上顎や下顎の歯を外側に移動させる
- 歯がきちんと生えるスペースを作る
- 小さな力をかけて拡げるため痛みは少ない
「拡大床(床矯正)」は成長段階である子どもだからこそできる治療法です。子どもの顎の骨はまだ柔らかく、顎を適切に広げて、歯並びの悪化の原因を改善することができます。
マウスピース矯正と同様に、決められた装着時間を守らなければ、期待している矯正効果が得られませんので、お子さまの自己管理と保護者様のご協力も求められます。
子どもの矯正はいつ始めればいい?
当院には多くの保護者様から「子どもの矯正治療は何歳頃に始めればいいですか?」というご質問が寄せられます。
矯正治療を始める時期は、お子さまの顎や歯の状態によって適切な時期がそれぞれ異なりますので、一概に「◯歳までにした方が良い」と断定することはできません。
インターネット上の適切な治療開始期間はあくまでも目安です。体の成長具合が一人ひとり異なるように、適切な治療開始時期も一人ひとり異なります。
ただし、歯科医院に歯並びの状態を診てもらうタイミングは早ければ早いほど、根本的な原因にアプローチする治療がしやすくなるので、相談は早めの方が推奨されます。
お子さまの歯並びが気になる場合、永久歯が生え揃う前に「歯並び相談」を利用して、歯科医師に診査・診断を受けると、顎の成長や歯の生え方についても知ることができます。
歯科医院の「歯並び相談」は必ず矯正を始めなければならないわけではありません。まずは、お子さまの歯並びにどのような問題があり、歯並びが悪くなる原因を知ることが大事です。
お子さまのマウスピース矯正は「ABC Dental」の歯並び相談へ
当院では、初診の個別「歯並び相談」を実施しております。
お子さまの歯並びのお悩み、小児矯正に関する質問、マウスピース矯正の種類、治療期間や費用、受験との両立など、どんなことでもお気軽にご相談頂けたらと思います。
お子様のお口の中を拝見し、診断結果をもとに、適切な治療装置や治療後の予測をお話させていただきます。無理に治療を勧めたり、焦らせることはありませんのでご安心ください。
※当院での歯並び相談は初回「無料」です。
まとめ
今回は小児向けマウスピース矯正装置「マルチファミリー」の特徴・メリット・注意点、そして「マイオブレイス」・「拡大床」との違いについてご紹介しました。
小児向けマウスピース矯正は負担が少なく、お口元がきれいなお顔立ちへ導くことができる治療法です。お子さまが笑顔に自信を持てるキッカケにもなるでしょう。